ガンマーリノレンて何・・・私なりに説明してみたいと思います。
ガンマーリノレン酸は、ビタミンFと呼ばれる必須脂肪酸です。
通常、ほ乳類は、大豆や菜種などの植物を食べることにより、
その中に含まれるリノール酸を摂取します。
そして、体内にある酵素・ デルタ6デサチュラーゼ により、
ガンマーリノレン酸に変換しています。
(ガンマーリノレン酸を直接摂ることは、日常においては、普通ないことです)
ガンマーリノレン酸は、さらに代謝されて、プロスタグランジン1シリーズという
局所ホルモンに代わります。
プロスタグランジンは、大きく分けて1~3シリーズあり、体の血圧、血糖、神経、免疫など、
いろんな調整をしています。
ですから、プロスタグランジンが不足するということは、健康な状態が保てないことを
意味します。
プロスタグランジンを十分に作るためには、十分なガンマーリノレン酸が必要なのです。
そこで、重要なことは、リノール酸をガンマーリノレン酸に変換する酵素の
デルタ6デサチュラーゼが、正常に働いているかなのです。

参考までに、
自然界においては、母乳(お母さんが作ったガンマーリノレン酸を、オッパイを通して
子供に与えています。)。
そしてヨーロッパの月見草の種子に少量入っています。
また、人工的には、世界で一社だけ出光興産のバイオ部門が微生物を利用して発酵で
生産しています。
ガンマーリノレン酸のはなし 普段、食べ物から作る脂肪酸の流れは、次のとおりです。
体の中での作業です。
簡単に説明します。

ここでのポイントは、日常の食生活では、ガンマーリノレン酸自身を、直接食べ物からは
摂れないということです。
ガンマーリノレン酸は、基本的に、リノール酸から変換できなければ不足するということです。
ということは、最終物質のプロスタグランジン1シリーズという局所ホルモンが、不足するのです。
その結果、その局所ホルモンが担っている体の働きが正常にできず、
病気という症状に出てきます。
ガンマーリノレン酸と
アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸との違いは、
アラキドン酸などは、酵素が働かなくても、直接、食べ物から摂れるということです。
肉や卵、魚からです。
世界的に見てバランスの良い食文化を持っている日本人は、十分足りているらしいです。
和食の生活をしていればのはなしですが。
ダイエットや加工食品を食べていては、論外です。
結論として | 食べ物から摂るリノール酸をガンマーリノレン酸に代謝ができなければ、ガンマーリノレン酸から発生するプロスタグランジン1シリーズなどの成分は作られず、欠乏症は免れないと言うことです。 大げさかもしれませんが、致命的です。 |
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対策として | 微生物発酵により作られるガンマーリノレン酸などを、食べることで補うしかありません。 |
デルタ6デサチュラーゼという酵素は、生活習慣、遺伝、ストレスの影響を受け、
働きが阻害されます。
ガンマーリノレン酸の主な欠乏症には、
アトピー性皮膚炎 | 高コレステロール血症 | 月経前症候群 |
生 理 痛 | 肥 満 | 糖 尿 病 |
アルコール性肝脂肪 等々 | 等々 |
などがあります。
アトピー性皮膚炎に関して言えば、次のような研究結果があります。
脂肪酸の数値 | 血漿リン脂質に含まれる脂肪酸のうち ガンマーリノレン酸 ジホモ・ガンマーリノレン酸 アラキドン酸など n-6系(リノール酸を除く)の脂肪酸量が、アトピーの患者は、、正常な人に比べて減少していることが、明らかになっています。 また、、その逆にリノール酸は、正常な人に比べて少し多く、その代謝異常も指摘されています。・・・代謝できず余った状態になっているのてしょう。 |
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原 因 | リノール酸をガンマーリノレン酸に変換する酵素、デルタ6デサチュラーゼの働きが悪いためだと考えられています。 酵素は、タンパク質であり、タンパク質の合成にも、原因があると考えられます。遺伝や食生活、生活習慣などが原因です。 |
考 察 | 上記のように、変換できなければ、リノール酸を食べても、代謝異常によりガンマーリノレン酸に変換されず、リノール酸が残ったままで多くなるだけであり、逆に、ガンマーリノレン酸やアラキドン酸が不足することになります。 ガンマーリノレン酸の不足により、IgEの調整に異常が起こり、炎症を起こします。 アラキドン酸などの必須脂肪酸は、細胞膜の構成成分であり、また、アラキドン酸は、細胞膜の流動性、細胞に必要な物質の吸収等に関係しています。 必須脂肪酸は、皮膚の完全性の維持に必要まものです。 アラキドン酸の不足は、細胞の不活性化と、弱い皮膚の原因になります。 プロスタグランジン1シリーズの局所ホルモンの不足は、、血圧、血糖、コレステロール、抗ガンなどに影響します。 また、抗アレルギーなど免疫にも影響します。 |
その他 | 脂肪酸の話の時に、アトピーの人がn-6系のリノール酸を食べると、アラキドン酸が増えて、炎症物質が活性化し、皮膚炎が悪化するという内容を、よく見ます。しかし、それは、健康な人の場合であって、アトピーの人は、リノール酸からガンマーリノレン酸への変換が悪く、その結果、アラキドン酸への変換が、増加することは考えにくいのです。 問題としては、変換されないリノール酸が過剰になることです。 |
食品としてのガンマーリノレン酸について
種 類 | バイオ・ガンマーリノレン酸 | 天然ガンマーリノレン酸 |
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製造方法 | ブドウ糖を培地として糸状菌を培養します。すると糸状菌は、太ってその細胞内にガンマーリノレン酸を含む油脂を蓄積します。これを抽出します。 | ヨーロッパの月見草の種子油です。 |
製造会社 | 1984年に当時の通産省の工業技術院化学技術研究所がガンマーリノレン酸生産技術の特許を開示する。 1986年に出光石油科学が工業化に成功する。世界で一社だけ。 |
イギリスのエファモール社が生産している |
特性など | ガンマーリノレン酸を含む微生物油脂には、オレイン酸が一番多く酸化されにくい。 母乳に一番多く含まれる脂肪酸も、オレイン酸です。 培地のブドウ糖の品質管理が容易にでき、安定して生産できる。 |
植物起源のものには、リノール酸が一番多く含まれ、酸化されやすい。 また、天然では、原料の種子に含まれる脂肪酸の量、組成が安定していない。 農薬等の問題があります。 |
ちなみに発酵方式によるガンマーリノレン酸の工業化の成功に対して、
1988年に日本油化学協会より関係者に工業技術賞が贈られました。
「第22回 日本油化学協会 賞 ・工業技術賞」
医薬品に応用されているガンマーリノレン酸
ガンマーリノレン酸は、外国では、いろんな病気の医薬品として扱われています。
日本の医療は、先進国に比べて、10年遅れているらしいです。
日本の医療は、閉鎖的です。
アトピー性皮膚炎 | イギリス、ドイツ、フランス、南アフリカなど、10数が国で使用されています。 |
月経前症候群 | イギリス、ニュージーランド、ドイツ、フランス、オーストリア、中国で使用されています。 |
その他のガンマーリノレン酸の摂取による効果について
コレステロール低下効果 | 坑血栓作用 |
糖尿病の合併症の神経障害の改善 | 免疫異常の膠原病の改善 |
アルコール代謝などの肝機能の改善 | 肥満などの脂質代謝の改善 |
抗ガン、抗腫瘍効果 | 腎機能の改善、人工透析患者の皮膚状態の改善 |
学習障害児、多動症の改善 多動症の子の血中脂肪酸組成では、ガンマーリノレン酸などの不飽和脂肪酸が少ないことがわかっています。イギリスなど、欧米等での臨床研究で効果が報告されています。 |
参考にした資料は、次の通りです。
ガンマーリノレン酸 | 飲食料品用機能性素材有効利用技術シリーズ №22 社団法人 菓子総合技術センター |
ガンマーリノレン酸データブック | 総合医学食学研究会 |
小児のアトピー性皮膚炎に対する EH008の多施設共同臨床試験報告 |
薬効報告(小児科臨床) 「この資料は、小児領域でのガンマーリノレン酸とアトピー性皮膚炎の関連についての大規模な、日本初の試みである臨床試験の結果です。」・・・という説明があります。 この臨床試験は、1991年11月から1992年6月までの期間国立小児病院などの10施設の医療機関の共同研究として行われたものです。3~10歳を中心に136人中、107人を評価対象としたものです。 臨床試験のまとめとして、86.0%に改善が見られたと報告しています。 |
素材で知る特定保健用食品 | 時事通信社 |
みなさんの、情報収集の参考にしてください。
ちなみに、ガンマーリノレン酸の分子の構図です。

分子式は、

たかだか、炭素18個、水素30個、酸素2個でできているだけなんですね。
しかし、それらが、体の中には、たくさんあって、いろんなことを、しているんですね。
ホンと、不思議なものですね。
追 伸
出光は、バイオで作ったガンマーリノレン酸の効果を踏まえて、
過去に・・・厚生省に医薬品して申請しています。
しかし、当時の厚生省は、味噌・醤油の類と同類と位置づけ、食品扱いとしたことにより、
ガンマーリノレン酸が医薬品として、医療の現場で使われることは、なくなりました。
追 伸 2024.5.27
遅くなりましたが、出光は、バイオガンマーリノレン酸の生産を、
随分と過去に中止しました。
2018年、昭和シェルと出光が経営統合したことを機に、
採算の悪い事業の整理からか、
バイオガンマーリノレン酸生産事業を廃止する流れとなっようです。
よって、バイオガンマーリノレン酸を主成分とする
プロマックスエクセルはなくなりました。
ただし、天然の「月見草オイル」由来の「ガンマーリノレン酸」は存在しますので、
安心してください。
品質は、少し落ちると思いますが。